診療内容

ヘルペス(単純性疱疹) の治療

しっかり治療したい「ヘルペス」

唇やその周辺、ときには陰部などにも生じるヘルペス。
赤み、水疱、痛み、ヒリヒリ感などを伴います。周囲の視線も気になりますし、大切な家族にうつしてしまうのでは?と不安が頭をよぎる方もいると思います。
ヘルペスは一度きりではなく、何度も繰り返す皮膚病です。なかには毎月のように症状が現れる患者さんもおられます。
ヘルペスについてよく知り、正しく治療し、長期的にヘルペスを抑えていくことで、あなたの生活をもっと快適なものにすることが出来ると思います。
ヘルペス(単純性疱疹)の症状が現れてお困りの方は、ぜひ相談ください。

ヘルペス(単純性疱疹)とは

ヘルペスは「単純性疱疹」とも呼ばれるウイルス性の皮膚病です。
病原ウイルスは「単純ヘルペスウイルス」と呼ばれ、ヒトの細胞に感染し、自己複製して増殖し、伝染していきます。

ヘルペスウイルスは接触によって感染します。
直接的な皮膚の接触のほか、食器やタオルを介してうつることもあります。
家族や親密な間柄での感染が多く、乳幼児期に箸や皿などを共有することで感染してしまうことがあります。
自分の患部に触れた指で、別の部位を触れることでヘルペスが拡大することがありますので、不用意に患部を触らないようにしましょう。もし患部に触れてしまった場合は適切に手を洗う必要があります。

ヘルペスの症状

口唇ヘルペス

初感染か再発であるかによって多少異なります。

はじめは、唇(その周辺)に患部にピリピリ感、ほてり感、違和感が生じます。
やがて赤みが生じ、数日中にちいさな水ぶくれがいくつも現れます。
症状のピークを過ぎると「かさぶた」が生じ、徐々に治っていきます。
その後も数週間から数ヶ月、発赤や色素沈着が残ることがあります。

初感染の場合、症状が重くなり、発熱やリンパ節の腫れが生じることがあります。

性器ヘルペス

陰部(ときに臀部)に生じるヘルペスです。
水疱、ただれ、強い痛みを生じます。性感染症として感染することがあり、パートナーに対する配慮が必要です。
体力が低下したときなどに再発することがあります。

ヘルペスの再発について

ヘルペスウイルスは一度感染すると神経細胞に入り込み、持続的に感染しつづけます。
口唇ヘルペスの場合は三叉神経節、性器ヘルペスの場合は腰仙骨神経節という神経の根元の細胞に潜伏感染を続けます。
そして風邪や疲労で体力が低下したとき、日焼けしたあと、生理前、歯科の治療後、免疫を抑える薬剤(ステロイドや抗がん剤)を使用したとき、などにウイルスが活性化して症状が生じます。
繰り返しヘルペスになるのは、その都度感染しているのではなく、体の中に住み着いてしまったウイルスが、ちょっとしたきっかけで暴れまわるからなのです。
そして残念なことですが、一度取りついてしまったヘルペスウイルスを完全に駆逐する方法は見つかっていないのが現状です。

ヘルペスの治療法

外用薬(抗ウィルス薬)

ゾビラックス軟膏、アラセナA軟膏など、ヘルペスウイルスを抑制する作用のある塗り薬を使用します。
次に触れる飲み薬による治療に比べると効果は劣りますが、軽症のヘルペスや、ピークを過ぎた治りかけのヘルペス場合には、お勧めできます。
飲み薬に比べ、費用が安いというメリットがあります。

※外用薬については市販品もあります。

 

飲み薬(抗ウィルス薬)

バルトレックス錠という抗ウイルス薬を使用します。
1日2錠の服用で効果的にヘルペスウイルスの活動を抑制することが出来ます。
最大5日分を処方しますが、塗り薬と比べるとやや高額(薬本体のみで約1,400円・3割負担の場合)です。
塗り薬(抗ウイルス薬)との同時処方は保険診療ではできません。
※2次感染を抑制、防止するために、抗生物質配合の塗り薬(ゲンタシン軟膏など)を同時処方することは可能です。

当院のヘルペス治療のポイント

長期戦略でヘルペスに立ち向かう

ヘルペスは症状の初期に治療を開始するのがポイントです。
違和感やムズムズ感が生じ、発疹がわずかに現れたくらいの初期に抗ウイルス薬を服用すると、ヘルペスは早期に収束します。
治療のタイミングが遅れると、改善まで時間がかかるうえに、周辺の皮膚にウイルスが拡散し、別の神経線維に入り込み、さらに多くの神経細胞がヘルペスウイルスに侵されてしまいます。
そうなると、ヘルペスが生じる頻度が増え、症状も重くなっていく傾向があります。

早期の治療を心がけ、合わせて体調管理、過度の紫外線を避けるなどの配慮を行うことで、長期的にはヘルペスは頻度が低下し、症状が現れても軽症で済むようになっていきます。

当院では、ヘルペスで通院歴がある患者さんで、以前ヘルペスが生じたことのある部位に「ムズムズ感」「違和感」が生じた場合は、早期に内服の抗ウイルス薬を処方するようにしています。(診断の上で個別に判断しますので、必ず処方することをお約束するものではありません)

早期の治療によって、長期的にヘルペスを抑制することが健康的な生活につながり、結果的には医療費の抑制にもつながるとわたしは考えています。

悪化因子を知り、予防につとめる

ヘルペスの悪化因子、発症因子には以下のようなものがあります。

  • 疲労、ストレス、睡眠不足
  • 日光など紫外線
  • 歯の治療
  • 皮膚の刺激、摩擦

こうしたことを知り、悪化因子を避けるよう生活面で配慮することでヘルペスの症状を生じさせないようにすることが重要です。

重症化に注意する

ヘルペスはときに重症化することがあります。
症状の経過を見極め、必要に応じて他の医療機関と連携しながら治療を行います。

・ヘルペス性角膜炎
眼の粘膜にヘルペスが感染することで障害を生じることがあります。視力障害を起こすことがありますので、眼への感染を防止することが重要です。
治療が遅れるとその後の生活に重大な支障を生じますので、眼の症状の合併を疑った場合は、眼科も併せて受診するようお勧めしています。

・カポジ水痘様発疹症
ヘルペスウイルスが広範囲の皮膚に拡大し、水疱、ただれを生じることがあります。
小児に生じやすく、発熱やリンパ節の腫れを生じることがあります。
重症化すると入院が必要になることがあります。

Q&A

陰部にヘルペスが頻繁に現れてつらいです。予防する方法はありませんか?

陰部(性器)や臀部に重症のヘルペスが頻繁に生じる場合、再発抑制のために抗ウイルス薬を長期に服用し続ける治療が認められています。バルトレックス錠を毎日1錠服用しつづけることで、ヘルペスの再発をかなり抑制できます。(口唇ヘルペスには残念ながら認められていません)

ヘルペスの治療をしているのですが、何週間も赤みが消えません。

抗ウイルス剤で適切に治療すれば、軽症のヘルペスの場合、通常は一週間程度で沈静化します。しかし、沈静化後も赤みや色素沈着が数週間から数ヶ月持続することがあります。この段階では薬は必要はありませんので、多少の赤みがあっても医師の許可があれば治療を終了して構いません。

発疹がなければ感染する心配はありませんか?

ヘルペスの症状の初期に、発疹はないものの違和感、ムズムズ感を感じることがあります。この段階でウイルスが皮膚や粘膜から排出されていることがあります。発疹がなくても何らかの自覚症状があるときは感染予防に十分な配慮が必要です。

アトピー性皮膚炎の場合、ヘルペスに感染しやすいというのは本当ですか?

ヘルペスは感染力の強いウイルスです。特に、アトピーや肌荒れ、擦り傷など、皮膚表面が弱っていると感染しやすくなります。
また、アトピー性皮膚炎の方は、カポジ水痘様発疹症という重症型のヘルペスを生じやすいので、ヘルペスの症状を疑ったら早めに皮膚科を受診するようにしてください。

ヘルペスが繰り返し出ます。もう治らないのですか?

ヘルペスウイルスは神経細胞に潜伏感染します。残念ながらこれを駆逐する手段はいまのところありません。しかし、適切な治療を行い、予防を心がけていくうちに症状が現れなくなってくることがあります。適切な治療と予防をこころがけましょう。

手元にゲンタシン軟膏があります。これはヘルペスに効きますか?

ゲンタシン軟膏は、患部を保護するとともに細菌による2次感染を抑える目的で使用されます。ゲンタシン単独ではヘルペスを抑える作用はありませんので、医療機関で抗ウイルス薬の処方を受けることをお勧めします。